シェーカー家具は、アメリカのシェーカー教徒のストイックな共同生活から生まれ、その思想は装飾を控えた素朴でシンプルな機能的なデザインを重視していました。そしてそこから生まれる削ぎ落された美しさを良しとしていました。
真摯な祈りから生まれたシェーカーのデザインは現代の多くのデザインの規範となっています。
八木沢木工は、シェーカーのシンプルさと実用性、機能性そしてそこから生まれる削ぎ落した様式美こそが美しさの本質であると考えています。地元で手に入る自然素材を活用し、環境に配慮したものづくりを行いながら、シェーカーの美意識を解釈し、再構築し世に送り出していきます。
1790年代にシェーカー教徒のストイックな共同生活の中から生まれたオーバルボックス。「規則正しいことは美しい」「美は有用性に宿る」「言葉と仕事は簡素であれ」「調和の中には大きな美がある」といった日本の民藝運動の思想にも通じるシェーカーの教えは、シェーカーの暮らしや生き方を体現し、今なお多くの人々に愛され続けています。
八木沢木工では、このオーバルボックスを再構築し、シェーカーがそうであったように、地元で採れた木材を用い、新たにスーパーオーバルのカタチを取り入れたデザインをつくり上げました。
スーパーオーバルは長方形と楕円の中間にあるような曲線で構成されるカタチです。1950年代にデンマークのデザイナーがラメ曲線を応用しデザインに取り入れました。
スーパーオーバルの緩やかな曲線は、現代北欧の建築や家具の特徴となっています。楕円形のシャープな曲線とは違い、緩やかな曲線で構成されるスーパーオーバルは収納効率に優れつつ、ふっくらと柔らかい印象をもたらします。
北欧生まれのこのソリッドなカタチに、寸法比率を日本人にとって馴染み深い白銀比で構成し、茨城のヒノキの美しい木目をウヅクリで浮かび上がらせ、シェーカーのストイックな美意識を保ちながら、北欧のテイストに日本のカルチャーを融合させた、ヒノキのスーパーオーバルボックスが生まれました。
オーバルボックスの特徴でもある、側面を巻く長い板を留める技法は「スワローテイル」と呼ばれています。その形状は、経年による材の反りや割れ、更には先端のハネにも対応し、木材が膨張や収縮を繰り返す際にカタチを保つために工夫されたものです。機能性を考慮した技法ですが、同時にシェーカーの優れた美意識が意匠になっています。まさに「形態は機能に従う」という思想を体現するものです。ヒノキのスーパーオーバルボックスもこの美しいスワローテイル技法を踏襲し、留め具にはヒノキとの相性の良い真鍮の釘を用いています。
オーバルボックスは元々、種子やスパイス、釘などの小物を整理するために使用されました。その美しいデザインと実用性を継承し、ヒノキのスーパーオーバルボックスは、デスクの上での文房具整理や、キッチンでの食材の保存、さらにはアクセサリーや茶器入れとしてライフスタイル様々なシーンで「魅せる収納」として活躍します。
ヒノキのスーパーオーバルボックスは、シンプルでありながらも、考え抜かれた意匠、そしてその機能性は現代のライフスタイルにも調和し、多くの人々に愛され長くお使いいただける一品となっています。
ヒノキのスーパーオーバルボックスの製作は、サイドバンド(側板)として板材を薄く割るところから始まります。サイドバンド(側板)にスワローテイル加工を施し、曲木加工するために煮沸し、材が柔らかい状態で曲型を用いて、スーパーオーバルのカタチに固定します。その後にスワローテイルを真鍮の釘で固定し、ボトム(底板)とトップ(蓋)を木製の釘で取り付けます。サイドバンド(側板)には木目の素直な曲げ易く、且つ型崩れしにくい材を、ボトム(底板)とトップ(蓋)には中央に美しい板目がくるような材を選定し、材料選びから職人たちの妥協なきものづくりが始まります。もちろん機械も使いますが大部分は職人の感性による手加工です。ヒノキのスーパーオーバルボックスは卓越した技術とクラフトマンシップ、そして伝承されてきた知恵の結晶です。
その技術と歴史を感じながら、日々の暮らしの中でその美しさをお楽しみください。